ハシノハシ店主の隣人です。店主の許可を得て、ブログを間借りしています。
なお、本文はハシノハシの店舗・営業情報とは1ミクロンの関係もありませんので、あらかじめご了承ください。
店主の協力のもと、隣人は2024年3月19日(火)に、新潟市で行われていた新潟国際アニメーション映画祭を訪れました。この映画祭は6日間にわたり、国内外のアニメーションを新潟市の各劇場で上映するイベントであり、タイミングがあった3月19日の1日だけ参加しました。



鑑賞した作品やトークショーは以下の通り。
1. 海⾨回声 Chinese Queer
STUDIO4℃の『マインド・ゲーム』や『鉄コン筋クリート』を彷彿とさせる一枚絵に惹かれて、トークプログラムに参加。作品が上映されるのかと思いきや、あくまで制作段階であり、この日は翁銘(Sam Weng) 監督が作った作品紹介PVのみの上映でした。
とはいえそのPVの出来栄えはすさまじく、このまま作品が完成すれば名作になることを予感させました。
中国において同性愛をテーマにアニメーションを作るとどうなるのだろうか、ということに興味がそそられたため、このプログラムに参加してみたわけですが、監督の説明によれば、中国の地方で若者がどのように暮らし、他者とのコミュニケーションを築くのかが主題であったとされます。もともとの原作漫画において、作品のコマ割りや演出が映画的要素に満ちており、アニメーションとの親和性が高いのではないかと考えたとのこと。特に同性愛が主眼ではないという監督の応答がやや意外な気もしましたが、中国ではいまさら同性愛にまつわる作品を採り上げることにいちいち身構えることもないのかもしれないな、とも感じました。
ジャケ買いのような気持ちでの参加であり、監督や作品に関する予備知識がまったくなかったのですが、中国と日本の合同アニメーション制作企画の一環であり、海⾨回声以外にも様々なプロジェクトが展開されているようです。
アニメーション作品のスタッフロールを見れば、すでにアニメ制作の場において日本人以外のスタッフが多数参加していることは承知していたつもりでしたが、もはやアニメ=日本文化という図式は成り立たないな、と強く感じるプログラムでした。

2. サマーゴースト
これは……「夏と花火と私の死体」だ。文字通りの内容だ。
と思ったら脚本が「安達寛高(乙一)」となっているので、実際に本人が参加しているっぽい。
どうりで脚本が見事なはずだ。中編くらいの尺だけれども、必要な情報が出そろい、鑑賞後に満足感がすごく高い。音楽の異同による場面転換がすごく良い。久しぶりにとても心地の良い作品を観たな、という気持ちになった。
あと「うらめしやー♪」という別れのあいさつがつぼる。何度も聞きたくなるし、思わず自分でも言ってみたくなる(ただし、おっさんなのでこれほどかわいい声は出せない)。
監督の「loundraw」という方は存じ上げないが、別の作品があったら観てみたいなと思わせる出来栄えだった。普通に良作。
3. アリスとテレスのまぼろし工場

初めて岡田麿里を生で見た。舞台挨拶で登壇されていたので。ファンです。
脚本だけでなく監督された作品を観るのは『さよならの朝に約束の花をかざろう』(2018年)以来だろうか。
うん。個人的には『アリスとテレスのまぼろし工場』はもっと面白くなっていた。
両作品の共通するのは「母と子」、あるいは「親子」というテーマだろうか。
私は『true tears』の湯浅比呂美以来、岡田麿里のファンなのだが、彼女の描く女性が好きだ。けっこうな癖があり、性格に難ありなのだが、その歪つさに惹かれるものがある。
今作では、主人公の彼女になりそうな女としての女性像と、妻としての女性像、そして母親としての女性像が作中で場面ごとに乱立しており、その外的混乱と一人の人間性の一貫性とでもいうような多面性がアニメーションの中で展開されている。
はっきりいえば、そうしたキャラクターの中の複雑さと、シナリオ展開の複雑さの両方についていくのはしんどかったし、鑑賞中に理解がついていけず、ん?となる場面も少なからずあった。
でもその難解さが良いなとも思う。『さよならの朝に約束の花をかざろう』も近親相姦への思慕がからむ取扱いの難しさがあったが、たぶん岡田麿里が監督として表現したいことは上手く言語化できないけれどもこういうことなんだろうな、という手触りを感じさせる。それが万人向けするかといえば難しいかもしれないが、少なくとも彼女にしか作れない何かを感じさせる点で、私は好きだ。
それと同時に、脚本家として参加しているときは、けっこう遠慮があったのかもな、とも思った。その遠慮によってバランスの良い仕上がりとなっている作品もあると思うので、どちらが良いかということではないのだけれども。
アニメーションとしての映像も素晴らしいですよ。
4. 片渕須直×横田正夫「高畑勲という作家のこれまで語られていなかった作家性」

